
同窓生からこれから出発を考えるJSAF派遣予定の後輩に向けてメッセージが寄せられています。
2011年留学コラム
「私は留学前、1年の留学での損失と利益を考えて問答し、何度も留学を諦めかけました。・・・留学が人生の中でかけがえのない経験だった、日本での1年どころかそれ以上に多くのことを学べ、私を大きく成長させてくれた、と自信を持って言えます。」
■ 布村 光さん テーマ:「医学専攻(Pre-med)英国留学を終えて」

布村 光さん(JSAF10期生)
旭川医科大学医学部 英国ニューキャッスル大学留学・医学コース
ニューキャッスル大学への医学専攻(Pre-med)スタディアブロードに参加した布村さんが、留学を通して学んだ体験をレポートしてくださいました。医学関連科目について、特に貴重な体験談を寄せてくれましたので、これから留学を希望する医学専攻の方には大変参考になるものだと思います。
Q1.留学の目的と、その達成度について、教えてください。
海外の大学の医学教育、研究を実体験として学び、又、海外の生活を通して文化、言語を学ぶこと。
医学部教育、研究が非常に盛んなニューカッスル大学での留学は、授業のみならず、参加自由の医学研究のセミナーが頻繁に開かれているので、最新の医学研究などにも触れられとても有意義でした。また、ホームステイでは素敵なイギリス人の家族に恵まれ、様々なイギリスの行事、文化を体験することができました。
Q2.最終学期に履修した科目について教えてください。
Biology of Ageing:
ニューカッスル大学のAgeing and Health unitは新しい研究部署で、このモジュールも今年からスタートしました。レクチャーは老化に関する様々な要素を最新の研究を交えて講義された。分子生物学的知見、遺伝学的知見、疫学的知見、そして老化に関わる疾患、と非常に興味深いレクチャーでした。
Disease of the Human Nervous System : 授業は3つのパートから成っていて、神経解剖と神経イメージング、精神科学、神経変性疾患でした。それぞれの授業は、主に特定の疾患に焦点を当て、定義、病理、診断、治療などについて講義されました。 日本の大学の授業と似ており、内容も日本で既習していたので、日本での講義を英語で受けているような印象でした。
Q3.最も苦労した課題やレポート自信作について教えてください。
Disease of the Human Nervous System
題材:Discuss the evidence for neurotrophism playing a role in the therapeutic mechanism of action of antidepressant drug.
内容:鬱病で海馬委縮の所見が見られること、また、従来からよく知られた抗鬱病薬の作用である神経伝達物質とその受容体への作用は急性にもかかわらず、薬の効果が表れるのに数週間を要することなどから、抗鬱病薬の海馬での神経新生に対する作用が注目されている。抗鬱病薬が海馬で脳由来神経栄養因子(BDNF)の生成を促し、BDNFが成人脳の新生細胞において神経保護に寄与しているという知見を考察した。
大変だったこと、やり遂げての感想:
日本の大学で、実験レポートなどは多く書いていたのですが、エッセイを書いた経験がなかった上、もともと文章を書くのが得意ではないので、非常に苦労し、多くの時間を割きました。イギリスの大学でのエッセイの書き方については、INTOの授業でエッセイを書いた経験が大変役に立ちました。この経験は、今後、論文を読み書きする際の自信になります。
Q4.留学を振り返って、日本の授業と違う点、イギリスの授業の特色について、自分が感じたことなどを自由にお書き下さい。
医学の授業では、講義室でのPPTによる講義を聞きノートをとる形式で、日本の授業とほぼ同じでした。
しかし、日本の学生に比べ、イギリスの学生は非常にまじめだと感じました。多くの学生が講義を聞きながら、あらかじめ用意したスライドのコピーにびっしりとノートを取っていました。しかし、日本では講義後に直接その場で先生に質問に行く生徒が多いのですが、ここではそんな生徒は1人もいなく、どうやらメールやBlackBoardで質問をやり取りしているようでした。
Q5.留学開始当初と比べ英語力はどのくらいついたと感じますか?
留学当初に比べると、日常会話等の英語に対する不安はほぼ無くなりました。リスニング力も普通の英国人の会話の60~70%くらいは理解出来るようになったと思います。ただ、地方による訛りもあって、かなり会話が難しい時もあります。英語の上達のために、前期の語学研修中はほぼ毎日メモ帳を持ち歩き、新しいフレーズや単語を書きとめていました。後期はそれに加え、医学の専門用語用の単語帳を作りました。すでに単語帳は3冊になります。それでも、日常会話では意味のわからない単語のオンパレードなので、会話を妨げない程度に知らない単語はスペルと意味を聞いていました。
Q6.就職活動のため、留学中に心がけたことや、履修した授業で工夫したことなどを教えて下さい。
就職活動で武器になる引き出しを増やすことが留学の大きな目的のひとつだったので、留学中は履歴書に書ける実績を作ることや、面接などで使えるネタをつくることを意識していました。そうすることで面倒なことや気が進まないことも、就活のためと気持ちを切り替えて挑戦することができ、それによって新たな友人ができたり、別のアクティビティを紹介してもらえたりと、結果として英語の上達にもつながったと思います。授業選びに関しては、目指す業界と関連のある映像の授業をとるため、留学生が履修できないクラスを教授に直接許可を得て登録させてもらいました。またサッカーのクラスを履修し、そのとき日本人が自分ひとりで最初はパスもまわってこないなか徐々にチームメイトとの関係を築いたことを、後の面接で協調性や行動力をアピールするエピソードとして活用できました。
Q7.留学生活の中で、最も良い思い出、大変だった思い出をそれぞれ教えて下さい。
ホストファミリーとの思い出など、良い思い出は数えきれないほどあるのですが、友達との思い出は忘れられない出来事の1つです。イギリスに来てすぐに出会った日本語学科の学生の一人がとても仲良くしてくれ、よく夜ごはんを食べに行ったり遊んだりしました。夏にstocktonというところにある彼の実家に遊びに行き、家族とwhitbyまでドライブしました。あいにく天気は酷い雨風だったのですが、2人でabbeyに登り、雨風の中名物のFish and chipsを食べ、その後、家族みんなでゲームセンターのパークゴルフで遊んだり、夜に家族とパブに行ったりと、本当に忘れられない思い出になりました。今、彼は東京に1年留学中ですが、この間の私の誕生日に明治神宮のお守りを送ってくれました。
大変だった思い出は、後期の授業でのクラスメイトは3年目だったので、1年生のように友達作りに積極的ではなく授業形式も講義室での授業だったので、友達を作るのが難しい環境だったことです。また、後期にBio medical societyに参加し、flesher’s week などのイベントで医学や化学を勉強している学生と交流する機会もあったのですが、学生達の英語が難しく、Bio medの学生に留学生がほとんどいないのもあって、疎外感を感じることもありました。中には仲良くしてくれる学生もいて、個人的に遊びに行くことがあっても、英語での会話が難しいのが事実でした。あまりに聞き直すと、何でもない、忘れて! みたいになり、理解できない自分に悲しくなったりしました。
Q8.留学を通して身に付いた、成長したと感じる点はどんなところですか。
日本での大学では常に受け身に授業を受け、部活とバイトも忙しく、試験の為にただ魚が水を飲むように全ての知識を飲み込むのに必死だった私ですが、留学中のこの9カ月は、時間の余裕と勉強の自由があり、さらに医学を勉強するには申し分ない環境が整っている恵まれた環境で、自分の興味のままに勉強したことは、自分自身の医学に対する探求心を大きく変えました。というのも、日本の大学では(イギリスの医学生も同様だと思うのですが)、過十分に知識を与えられるが為に、もはや興味ではなく試験の為に覚えるという本末転倒な勉強姿勢が身にしみていたのです。
留学においては、何事も自分から積極的に取り組まないと始まらないのは定説ですが、言語の壁があり思うようにいかないことがほとんどです。そのために挫折することもしばしばありました。大学では、様々な大学の研究者を迎えてのセミナーが頻繁に開かれ、日本の大学(特に私の大学)ではないことなので、貴重な機会だと思い、頻繁に聞きに行きました。しかし、内容を十分に理解するのが難しく、何度もこれが日本語だったら、、、と思いました。しかし、その環境は逆に探究心を煽り、より積極的に学ぼうとする姿勢につながったと思います。
Q9.これからの目標、進路についてはどのように考えていますか。
日本の大学に戻り、勉強を続けるのは当初の予定と変わらないのですが、留学中、様々な人から「今後英国に戻ってくる気はあるのか、英国で働く気はあるのか」などの質問を受けるので、しだいに、英国又は海外での医師免許に興味がわきました。英国のNHSのシステムはよくわからないのですが、海外の医師の為の試験があるようです。ホストシスターなどもとても協力的なので、将来、実際に試験を受けるとしたら、助けになってくれると思います。一方、米国の医師免許の試験USMLEはよく知られており、日本の大学でも勉強している友達が何人もいます。帰国後は、大学での勉強に加え、米国、英国での医師免許取得も目指したいと思っています。
Q10.留学を通しての現在の想いについて、教えてください。
私は留学前、1年の留学での損失と利益を考えて問答し、何度も留学を諦めかけました。同期の生徒の仲間意識が強い私の日本の大学では、進級や国試において同期の友達の助けが非常に重要なので、1年遅れることは大きなリスクに繋がる上、既習の知識を忘れてしまう恐怖もありました。大学の先生方もそのことを危惧され、留学の意図や必要性を尋ねられました。自分自身に何度もその必要性を問いかけ、より自分の為になる留学を考えました。日本での1年に見合うだけの留学をしたいし、周りに遊学とは思われたくありませんでした。
はじめ、自分自身で留学先大学との手続きから何もかもやろうとし、大学の教授や高校教師からの推薦文やその英訳、自己推薦文などと、必要書類一式そろえました。さらに金銭面も破格だったので地元の奨学金に応募したのですが、最終選考で落とされ、その頃大学で忙しかったのもあり、あまりの手続きの大変さに留学を諦めようと思いました。そんな時にJSAFに出会い、これまでの苦労が嘘のように着々と留学が現実になりました。しかし実際は、体裁のよい理由を並べて周りを説得するものの、留学の価値など本当のところは言えず、自分でも本当に休学してまで留学することが不安でした。英語にも全く自信はありませんでした。
ホストファミリーの詳細も出発の前日になってようやく分かり、不安だらけで着いた異国の地でしたが、ホストファミリーは家族の一員として温かく迎えてくれ、大学のサポート体制も非常に整っていたので不安なことなど何もありませんでした。勉強だけでなく、週末はパーティーや旅行などで忙しく、毎日が本当に楽しく、あっという間の9カ月でした。英語力も知らず知らずのうちに伸びていました。
I NTOでの授業は基礎的なことに加えて、リサーチ、エッセイやプレゼンテーションを習いました。これは学部授業での試験にも役立つだけでなく、それ以上に、自分の勉強に対する姿勢を変えるものでした。日本の授業では、実験レポートは多く書くものの、エッセイの書き方は無知でした。ましてや、英語での論文や出版物を参考に、英語でエッセイを書くなんて初めてでした。さらに様々な研究のプレゼンテーションを聴くことも出来、9か月を通してAcademicな英語のスキルを学べたことは、私の視野を大きく広げました。しかし実際は、9か月では足りず、出来るならばもっと英国の大学で学びたいというのが本音です。
留学を可能にしてくれた家族やJSAFの方々、支えてくれたINTOのスタッフやホストファミリーには感謝してもしきれない思いです。
留学が人生の中でかけがえのない経験だった、日本での1年どころかそれ以上に多くのことを学べ、私を大きく成長させてくれた、と自信を持って言えます。


布村さん、ありがとうございました。これからのご活躍を期待しております!
留学コラム バックナンバー
■2011年留学コラムVOL2「人生において、「留学」とは?」
■2011年留学コラムVOL1「医学専攻(Pre-med)英国留学を終えて」
■2010年留学コラム 「留学と就職活動」
<<<PDF版
2009年留学コラム
■VOL8
「米国ユタ大学学部 留学を通して得たもの」
■VOL7
「アメリカ有名大学進学について2」
■VOL6
「通訳資格、TOEIC、英検、留学は資格取得にどう役立つ?」
■VOL5
「アメリカ大学進学について1」
2008年留学コラム
■VOL4
「留学とキャリアデベロップメント2」
■VOL3
「留学とキャリアデベロップメント」
■VOL2
「留学後の就職活動について」
■VOL1
「学部留学を通して得たもの」